さて今回は念者に残された若衆二人の物語。 丸尾勘右衛門と美少年・多村三之丞で出会ったのは、2月12日の奈良興福寺の南大門で催された薪能(たきぎのう)の帰り道だった。 衆道好きな勘右衛門が三之丞をコマすのは簡単だったに違いない。初桜の咲くころ、情を交わそうと約束してその夜は別れたものの、勘右衛門は風邪をこじらせてあっけなく儚くなってしまう。
がーーーーん!枕を交わす日を心待ちにしていた三之丞くん、大ショック。 自害しようとまで思いつめる三之丞を止めたのは、元服して間もない様子のきれいな男だった。 左内と名乗った男は、前髪立ちの時(元服前)、5年あまりも勘右衛門と衆道関係にあったという。さらに勘右衛門から三之丞のことは聞いていた。…って、衆道関係ってフクザツだぁ。 「私は先々出家して勘右衛門の墓を守るつもりだけど、キミは言葉だけなのだから、勘右衛門と会わなかったことにして忘れちゃいなさい」 「だって、あなたは思い残すこともないほど枕を共にしてきただろうけど、僕はまだ一度も可愛がってもらっていないんだから、後を追うしかないじゃないか」…っていうか、たった一度言葉を交わしただけでそーゆーことになるほうが…考えらんねー。 すったもんだの挙句、三之丞くん、自害を思いとどまるかわりに、いーことを考えた。 「じゃ、あなたがぼくと衆道の契りを結んでよ」 …ちょっと待て、キミは誰でもいいのか!? 左内くんだって焦ってしまうのけど、ついに押し切られてしまうのだった。泣く子にゃ勝てないよねぇ…(^^;
夜もすがら、二人で勘右衛門との馴れ初めなど話すのだけど、笑ってしまうのは、ナンパの手口が似たようなもので、色の道に通じていたというわりには、勘右衛門のバリエーションは少なかった模様。 やがて眠りについた二人の夢枕に勘右衛門が現れて、二人が兄弟分の契りをして嬉しいと告げる。そして夢の中で、三之丞の鬢(びん)を当世風に直してやる。 目が醒めると、月代は本当に綺麗に剃ってあったという。…勘右衛門、未練やなー。 |