今回は凄絶な悲恋物語である。 激しい夕立にあった武士が、長坂小輪(こりん)という12、3になる美少年に傘を借りたことがきっかけだった。 父を亡くし、傘細工で生計を立てている母を思うと、とてもじゃないが傘はさせないという少年の心根に感心した武士が仲立ちとなって、小輪は小姓として明石の殿様に仕えることになる。 小輪の「遠山にほんのりと現れた月」のような清らかな美貌と真っ直ぐな気性が殿に好まれ、やがて夜のお伽をすることに。 この殿様、睦言で「お前のためなら命を捨てる」なんて言っちゃうほど、小輪にぞっこんベタ惚れ。 嗚呼それなのに、小輪くんときたら、「ご威勢に従うということは、衆道の誠ではございません」と、なんともすげない。その上、 「私も執心をかけるなら、命に替えて親しくできるような念者にめぐり会いたいものです」 とまで言ってのける。 さすがに殿様もカチーン。陰で聞いている寝ずの番をしている侍も冷や汗タラタラだったことだろう。 それでも座興にしてしまおうとする健気な殿に、 「今申し上げたことは、神々に誓って嘘ではございません」…小輪くんてば、命知らず。 そこまで言われても、その気性の強さが可愛いと思う殿であった。 そんなつれない小輪だが、城中で化け物騒ぎが起きた時には殿のために盾になり、化け物に化けていた古狸の首を切り落としたりと活躍を見せ、殿様はますますご寵愛を深める。 でも、その頃、小輪は惣八郎(そうはちろう)という青年と密かな恋を育んでいたわけで…恋って不条理なのね。
そして、ついに煮詰まってしまったのだろうか。衣替えの時期、小輪は大胆にも、愛しい惣八郎を葛篭(つづら)に忍ばせ、引き込んでしまう。 皆が寝静まり、恋は今と、帯も解かずに熱い抱擁を交わし、「来世までも」と契る二人。 |